昨年の10月にちょっと手強い子がやってきました。名前はいくら(仮名)、まもなく3歳というシーズー犬でした。なにがすごいかって?・・・・。何もかもです。
とにかく止まらないんです。1日の3/4は動いているんじゃないかと思うほど動き回っているんです。しかも鼻をならしながら・・・・
私が事務所に入ればワンワンワンワンワン!! 人が来ればワンワンワンワンワン!!
ドアを閉めればワンワンワンワンワン!!車に乗せればワンワンワンワンワン!!
触ろうとすればこの世の終わりが来たかのような絶叫をあげ、触ればガブッ!!
一日を通していくら(仮名)の存在を感じない時はないほど気になるんです。
当然訓練所に来てもこんな行動をする子ですからお家でもすごいことは明らかでオーナー様が相談に訪れた時はかなりまいった様子だったのを覚えてます。いろいろ話すうちに自分らの手では負えないということを悟ったらしくその日のうちに預けていかれました。そう・・・私といくら(仮名)の戦いの幕開けです。
前述したように朝から晩まで存在をアピールするいくら(仮名)、原因は持って生まれた興奮症にくわえ室内での放し飼いによる慢性的な自己主張の誇示とテリトリーの防衛行動です。一般的に催促して吠えたり鼻をならす犬は無視をするのが効果的といわれますが100年無視しても止まらないのは明らかだったのですがとりあえずムシムシ作戦の開始です。1週間後・・・・・変化なし、2週間後・・・・・変化なし、うーんやっぱりね。
作戦をリード作戦に変更!吠えたらキュッ、吠えたらキュッといくらの(仮名)の動きを封じること数百回。最初の2ヶ月間は朝から晩までいくら(仮名)づくしでした。2ヶ月を過ぎた頃から日に日にいくらを気にすることが少なくなり無駄吠えと感じる吠え方はほとんどと言っていいほどなくなりました。
仕事帰りに時々寄っていくさすけ(ゴールデン)のオーナーも最初のいくら(仮名)を知っているだけに「随分静かになりましたね」と驚いた様子。第三者から見ても明らかに変化したことがわかるくらいに静かになったことに私も一安心。あとは時間の経過によるぶりかえしやむらっ気をよく観察しながら適切な復習を重ねれば大丈夫と判断しようやく出口が見えてきました。
最初の状況が状況だっただけに私は6ヶ月以上の預託期間と1ヶ月の出張訓練が必要だろうと読んでいたのですが思いのほか早く卒業できそうだとオーナー様につげると安堵の様子でした。その後4ヶ月目に多少のぶりかえしやむらっ気はあったもののひどいものではなくすぐに落ち着き5ヶ月間の訓練は終了し、めでたくお家に帰り出張訓練に切り替えて今度は今まで好き勝手をしてきたお家でオーナー様と共にトレーニングです。
お家に帰ってからは今までのような放し飼いはやめてもらいサークル飼いに改めてもらって、いくら(仮名)のテリトリーは縮小しもらいました。当然帰った初日は今まで自由にしてきたお家に帰ってきたので「出せー出せー」となきまくり騒ぐこと騒ぐこと。
そこでいくら(仮名)が騒いだ時の対処法、つまり止め方をオーナーさんに見てもらうべく私の出番です。私がいることも忘れたように騒ぎまくっているいくら(仮名)のもとへ素早く行き「やめ、待て」と制止。命令だけで従わないことは予想してたのであらかじめ用意しておいた新聞紙をまるめたおしおき棒でスパーン!!
実際にいくら(仮名)を叱る強さを目の当たりにしてここまでやらなければ静かにはさせられないんだとオーナーさんも覚悟を決めたらしく次に騒いだ時には一生懸命いくら(仮名)を叱ってくれました。やはり普通の人は犬を叩くというのは抵抗があるものです。かくいう私もこの世界に入った当初は犬を叩くことはできませんでした。しかしそれをやらなけらば理解しない犬もいるのだいうことを嫌というほど味わい心を鬼にして犬を叱ったものです。
こうしてオーナーさん、いくら(仮名)、それと小生の努力が報われ、ようやくオーナーさんの家に平和が訪れました。
総論
悪癖がついたワンちゃんのしつけや訓練は簡単なものではありません。誰が一番つらいかと言えば間違いなく“ワンちゃん”です。そうならないために飼い主さんが正しい知識と強い心構えを持ちましょう。
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