~願望~

あるトレーナーはこう唱える。

“吠えるのにも咬むのにも原因がある。まずは原因を取り除くことから始めよう。”

そんなのは当たり前のことである。

取り除くことができない原因だったらどうするの?
また取り除いても吠えたり咬んだりしたら今度はなんて言うつもり?

“徐々に馴らしていく。時間をかけてやっていく。”

そう言うだろう・・・・。
それでもダメならどうするつもり?

「この子は脳に障害がある」それとも「この犬の前世は首を締められて殺された人だから首を触ると咬むんだ」とでも言うつもり?実際そういうふうに言われたことのある飼い主様にお会いしたことがある。

原因を取り除けば、自由にさせてあげれば、ストレスを無くせば・・・、時間をかければ・・・

タラレバでものを言うのは素人である。

ある学者は“犬は群れを作らない。群れを作らないから犬は上下関係を構築しようとしない”と唱える。

またある学者は“犬は群れを作り、犬の間では上下関係を構築する。しかし人間との間にはそれを持ち込まない”と唱える。

まずは“犬は群れを作らない。群れを作らないから犬は上下関係を構築しようとしない”について・・・。

真っ向否定させていただく。動物は基本的に犬に限らず群れを作ることが多い。それが生きていく上で好都合だからである。おそらく実験でもしたのであろう。だが実験もやり方によっては結果が大きく異なる。そこに偏見や個人的な思想が入り込めばいくらでも結果は変わってくる。

どうしても犬には群れを作ったり、支配行動をする生き物であってほしくないのであろう。ゆえに“犬は群れを作らない”とか“上下関係を構築しない”いう結果に持って行こうとする。

私が“犬は群れを作る”と断言するのにはちゃんと根拠がある。田舎の当訓練所付近では時々数匹の雑種が徒党を組んでウロチョロしている。たくさんの犬の声がするからなのだろう、時々どこからともなくやってくる。同じように那須の山の中では捨てられた猟犬がやはり徒党を組みウロチョロしている。

その徒党の中にはいじめや上下関係という序列が存在する。自然界で起こることが人間と犬の間に起こらないとなぜ断言できる。

もう一つはもう20年以上も前の話だからたぶん話しても良いと思う。どこかの訓練所で訓練中にジャーマン・シェパードのNが逃げだし行方不明になったらしい。ところが1~2週間後同じ場所で訓練していたら数頭の雑種を引き連れ、現れたという。しかも少し肥えて・・・・

自然にできた群れか、人為的にできた群れかはさておき犬が何かと共存する時に上下関係は目を覚ますことが多いように思う。

“犬は群れを作り、犬の間では上下関係を構築するが人間との間にはそれを持ち込まない”について・・・。

残念だが犬とか人とか猿とか分類上の名称は人間が作り出した概念であって、犬が人間を自分(犬自身)と違う種族と捉えているとは言い切れない。「なんかこいつら俺らと少し変わってんな~」程度にしか思っていないかも知れない。 群れを作ると断言している以上、人間との間に上下関係を持ち込まないとなぜ言えよう。

またある学者はこう唱える。
“犬と人間の関係は仲間同士つまり対等である。対等であるから上下関係は構築しようとしない”と・・・。

それぞれの学者達の言葉を式にしてみた。

群れを作らないから犬は上下関係を構築しようとしない → 犬=犬

群れの中で上下関係を構築する → 犬≠犬 

でも人の偉大さを理解してるから上下関係は持ち込まない → 人>犬
人と犬は仲間同士 → 人=犬

ということになる。 犬=犬、犬≠犬、人>犬、人=犬

バラバラ・・・・。

ではこれではどうだろう。

犬は群れの中で上下関係を作り → 犬≠犬 、犬は人との間に上下関係を持ち込み → 犬≠人 、人と犬は平等ではない → 人≠犬

つまり 犬≠犬、犬≠人、人≠犬 

なんかしっくりくる。 犬は人間と友好関係を結びたがっていて、人間の偉大さを知っており、上下関係などは築こうとしない。吠えたり咬んだりするのはストレスや社会化不足が原因であって、犬は悪くない・・・と。

ストレスや社会化不足が原因なのは認めよう。しかしそれだけではつじつまの合わないことが多すぎる。

友好関係を結びたがっているならなぜ逃走行為や警戒行動が起こる。 人間の偉大さを知っているならなぜおしっこをかけたり、攻撃してくる犬がいる。 上下関係を築こうとしないならなぜ威嚇行動を見せる。

どうしても犬には友好的で、人間の偉大さを知っていて、思いやりがあって、悪いことなど一切考えない生き物であってほしいらしい・・・

そんな都合のいい生き物がいるわけなかろう。 下の写真をご覧頂きたい。

下の写真をご覧頂きたい。

防御用の盾:ディフェンスボード 1号(2号開発中)
咬みついた痕 1
咬みついた痕 2
咬みついた痕 3

これはいたずらをして咬んだ痕ではなく、襲いかかってくる犬の攻撃を防いでできた痕である。咬んだ痕を見れば、飛びかかってきたり回り込んでの攻撃を防いでいることがおわかりになるだろう。これがなければ私の体がどうなっていたかは容易に想像できると思う。これで一頭分の痕跡である。

拒絶のメカニズムは犬の大きさに関わらず一緒だが大型犬は私の息の根を止めるつもりで襲いかかってくる。盾越しに聞く犬の唸り声や盾に咬みつく姿には身も凍る。リードをつけて普通に訓練などできようはずもない。とにかく拒絶が無駄なことだと諦めて静かに「フセ」をするようになるまで防御するしかない。

全ての犬をタラレバや願望でしつけができるなら誰が命がけで訓練などするものか・・・。

絶滅危惧種:中村信哉は絶滅の危機に瀕しながらも今日も咬みつくわんこを見守る

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次