~覇気~

こんにちは。絶滅しかけた中村です。

ちょっと読んでいただきたい。

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覇気の意味:物事を自分からやり遂げようとする気持ちや意気込み。類義語として:闘志・野心・野望。 
(三省堂現代国語辞典より)

一般的に覇気と言うと類義語にある闘志・野心・野望などをイメージしがちだが私が見習いに求める“覇気”とは主として“物事を自分からやり遂げようとする気持ちや意気込み”のことである。

また覇気にも体現化する覇気と内に秘めたる覇気があり、私はそれを自在に操ることを見習いに求める。時と場合により覇気を表に出すことも必要だし、出してはいけない時もあるからである。 覇気のある者は内に秘めていても見る者から見ればすぐに分かるものである。

覇気のない者は訓練士には向いてない。どんな職業でも同じかも知れないが特にそう思う。なぜならそれを必要とする場面が多々あるからである。特に訓練においては訓練そのものが最も忍耐を必要とする作業であり、“物事を自分からやり遂げようとする気持ちや意気込み・闘志・野心・野望”の低い者はいい訓練はできない。

こと本気咬みの咬癖犬に関しては“覇気”を最も必要とする。“普通の覇気”ではない。“尋常ならぬ覇気”が必要とされる。これに関しては内に秘めたる覇気を体現化できなくてはいけない。覇気のない者は目的を成就することは出来ない。

昨今の入門希望者は口をそろえて言う。

「咬みつく犬を訓練できる訓練士になりたい」と・・・・・・・

“覇気”のかけらもない者がなんでもっとも覇気を必要とする咬癖犬の訓練ができるのだろうか。 例えば・・・大きい声を出すとか意思表示をはっきりするとか観察力を磨くとか謙虚になるとかほんの些細なことでも私が指導したことはすべて“覇気”さえあればできることであり、今現在身についていなくてもそれを身につけるために努力することが“覇気”となって現れるのである。

目的を達成するために負けることも謙虚になることも思いやりを持つことも“覇気”である。 もう一度言う。覇気の意味は“物事を自分からやり遂げようとする気持ちや意気込み”である。これは教えることではなくて本質的な問題である。覇気のない者には教えることすら叶いません。 所長の言ってることが理解できず実行できなければ辞めていただいて結構です。

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これは当訓練所の教本にある“覇気について”の全文である。

どこの訓練所でも覇気のない者は続かない。“覇気”を持った者だけが先へ進むことが出来る。

訓練士の仕事は訓練だけでない。訓練はやって当たり前であり、できて当たり前。訓練の出来不出来はあまり評価の対象とはしない。メインワーク(よその訓練所で言うところの雑用のこと)への取り組み方、犬への接し方、とりわけ私は人に対する思いやりと表現力や文章能力を評価の対象としている。

わんわん訓練所なら“尋常ならぬ覇気”も必要としないだろう。普通の“覇気”で十二分だと思う。当訓練所に集まる犬はエサやボールを見せればしっぽを振ってついてくるような犬ばかりではない。誉めてしつける何とか式訓練や動物行動学などなんの役にも立たない犬が集う。一瞬でも隙を見せれば即命取りになるような状況が毎日のようにある。初期段階では普通に世話をするのさえ困難な犬が半数を占める。毎日が闘いである。

「何件もの訓練所で断られました」
「諦めた方が良いと言われた」
「薬物療法を勧められた」
「前世が首を絞められて死んだ人だから首を触ると咬むんですとカウンセラーに言われた」
「社会化が遅かったからもう無理ですと言われた」

絶望の声を耳にして、どれほど重症の犬かと思いつつ、いざ行ってみると何て事はないわんこだったりすることもある。そんなホッとする瞬間も時にはある。

しかし昨年度は3頭に1頭の割合で本気咬みの咬癖犬を取り扱った。危うく絶滅しそうにもなった・・・。

それでも前に進むしかないのである。

当訓練所は何がすごいわけでもない。日本一になったこともないし、カリスマでもチャンピオンでもない。
だが命と命をぶつけ合って犬と話し合う方法は知っている。

咬まれようが、怒鳴られようが、ぶっとばされようが進むしかないのである。自尊心が傷つくこともあるだろう。体が悲鳴をあげることもあるだろう。クソミソに言われて泣きたくもなるだろう・・・。

だが好きで飼ったのに撫でてあげることさえもできなくなってしまった飼い主の深い哀しみには遠く及ばない・・・
命の終わりを一方的に告げられる犬の苦しみには遙か遠く及ばない・・・・

覇気のある者はいずこ・・・・・

絶滅危惧種:中村信哉は絶滅の危機に瀕しながらも今日も咬みつくわんこを見守る

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