最近はいろんなしつけ本が出ている。○○のきもち、○パラ、絶対失敗しないしつけ方をうたった物などどれをとっても困った飼い主さんの購買意欲をそそる題名、内容のものばかりである。私も流行に乗り遅れてはならぬとばかりに時々何冊か買ってみる。そしていつも思う。「なんだ当たり前のことしか書いてない、損した・・・・」
当たり前のことなのだが本に書いてあるとおりにできたら誰も苦労はしないのである。そう簡単にできたら我々は廃業である。そしてもうひとつ思うことがある。どれだけの犬がこの方法で利口になるのだろう?
必ずと言っていいほど書いてあるのが“ご褒美をあげて誉めることで意欲的に従う。”“犬は叱ってはいけない。”“体罰は使ってはいけない。”この3つである。そして毎度毎度疑問に思う。ご褒美に見向きもしない犬だったらどうするんだろう。誉めてもしっぽも振らない犬だったらどうするのだろう。野生の本能をむき出しにした人間に従属しようとしない犬だったらどうするのだろう。
決して誉める訓練を否定しているのではない。それが通じない犬を飼っているオーナーさんを対象としたコメントや情報をもう少し載せたらいいのになと思っているだけである。例えば”英国式トレーニングで問題が解決できないワンちゃんのマル秘テクニック満載!! ”とか“エサにも誉めにも見向きもしないワンちゃん専用トレーニング一挙大公開!! ”とかもう少しできない子のためのページや情報を増やしてほしいものである。
これは子供を教育する上で共通することではないかと思うのだが(正確に言うと人間の教育論を犬の世界に当てはめているのだが)世の中できる子ばかりではない。テキストどおりに教えたところでそれを素直に吸収していく子供もいれば勉強が好きではなくあまり吸収しない子もいる。勉強を好きになるように教師が工夫をして興味を持たせ、できたら誉めて自信をつけさせヤル気を出させるというのはまさに“英国式トレーニング”と同じである。
しかし“英国式トレーニング”がいくら最新の訓練方法だ、犬にストレスをかけないなどともてはやされたからといってそれですべての犬を救えるわけではない。問題はそれすら通じず犬が本能のおもむくまま行動した時にどのように対処すべきかがほとんどのしつけ本には書いていない。この“本能のおもむくまま行動した時”というのが人間の理屈が通じない状態である。理屈が通じない場合体当たりで対応するしかない。
例えば・・・「無駄吠えをする犬には無視が効く!」とある。これは無視をされて「吠えても要求が通らない」という判断ができる犬にのみ有効である。その次に無視しても効果がないなら「水鉄砲で水をかけよう」とか「お酢スプレーで解決しよう」と書いてある。つまり極軽度の罰を与えるのである。それでもダメな犬のことが書いてないのである。
あきらめろということなのか?それともその先はとても口に出して言えませんということなのか?私は後者であると思う。つまり「口で言っても理解しないなら体罰を使って厳しく叱り、その行為の愚かさを痛感させましょう。」とは書けないのです。当然です。「犬は利口だから体罰は使わなくても理解できる」「誉めることで犬はぐんぐんお利口になる」とうたっているのだから書けるわけがない。でもそれはしつけに関わる人間(編集に協力したトレーナー)として無責任である。しつけに関わったことがある人間であれば誉めるだけで利口になる犬ばかりではないことは分かっているはずである。それについてきちんとコメントすべきである。
いわゆる英国式トレーニングが通じない犬たちを救う方法・情報を記したしつけ本が早く出てほしいものである。出たら出たで物議を醸すかも知れないが・・・・
補足
体罰を使用したトレーニングは誉めることをしないかのように誤解されていますがそれは大きな間違いです。体罰を使用する場合リスクを伴いますので英国式トレーニング以上に誉めることに精通していなけれできないということを付け加えておきます。
総論
犬のしつけ・訓練は理屈どおりにはいきません。時には体と体がぶつかり合って理解させることもあるのです。
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