~今と変わらず~

これはもうかれこれ16年くらい前のお話です。
犬種は何だったかちょっと覚えていないのですが、問い合わせの内容は「うちの犬は気に入らない事があると歯をむいて威嚇するんです。ちょっと手に負えないので訓練に出そうかと思っているんですが・・・」と、まぁよくある話ですが話の内容から訓練すれば何とかなるかもしれないということは伝え、訓練の内容と費用、期間などを説明し電話は終わりました。

それから半年くらいしてからだったでしょうか。
「パグを飼ってるんですが生後半年になるので訓練に出そうかと思ってるんですが・・・」

そんな内容の電話でした。聞き覚えのある声だったので「もしかして以前お電話いただいた方ではないですか?例のワンちゃんはどうですか?」と質問したところ、「手に負えないんで処分しました。」

なんともあっさりした返事が返ってきました。

なぜ処分する前に訓練に出してくれなかったの?

私はやり場のない感情を抱きました。飼い主さんから見て手に負えないワンちゃんでも訓練することによって扱いやすくなるケースは多いのです。これも9年くらい前の話ですが保健所に出すか訓練所に出すかもう選択肢は2つしかないと切羽詰ってやってきた飼い主さんも「あーあの時先生に電話して本当に良かった。もし自分らで判断していたらこの子は処分されていたんだもんね。」と喜ばれたこともあります。あの時は訓練士になって本当に良かったと思いました。

確かに唸ったり咬みついたりするワンちゃんは矯正するのに時間もかかるし費用もかかります。訓練する側も心してかからないと痛い目にあいます。しかしそういうワンちゃんでもけっして好きでそんなワンちゃんに生まれたわけではありません。飼い主の飼い方が悪かったのか、遺伝的にそういうものを持ち合わせていたのか今となっては知る術もありませんが、せめてもう少しワンちゃんの生きる道を真剣になって探して欲しかった。

「申し訳ありません。よそへ行ってもらえますか。」

電話が壊れるんじゃないかと思うくらい受話器をたたきつけ電話を切りました(本当に壊れました。)
訓練すればお利口になったかも知れないワンちゃんを処分し、新しい犬を飼ったから訓練して欲しいと頼まれても「はい、わかりました」と答えられるほど商売っ気はない26歳の血気盛んなころの話です。まあ今同じ電話がかかってきても同じように答えるでしょうけど・・・

絶滅危惧種:中村信哉は絶滅の危機に瀕しながらも今日も咬みつくわんこを見守る

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