こんにちは。“絶滅危惧種”の中村です。
先日、1冊の本を購入した。
動物行動学を専門とする著者の自信満々の発言にまんまと引っかかってしまった。私もバカである。
あってる部分もなくはないのだが矛盾点がかなり多い。それに今更そんなこと言ってもどうしようもないということを述べ、これからどうするかを書いてないのが非常に残念だった。
抜粋してその不可解な点を指摘してみたい。
「甘やかす」ことが問題行動の原因ではないと言う主張
まずは犬の社会化について・・・。
社会化とは簡単に言うと人間との関わり方、外界刺激に対する免疫をつけるためのしつけと言ったところだろう。主に幼少期に行われるべきものだが年をとってから行っても改善されるケースも多い。
問題行動の原因は社会化不足であることは訓練士なら誰でも知っている・・・・筈である。この社会化を怠ったために問題行動に発展することがしばしばある。もちろん飼い主の下に来る前に母犬や兄弟犬とどう過ごしてきたかも問題行動に深く関わっていることは間違いない。
この社会化の重要性を説く人の中には「飼い主が甘やかすから犬をダメにするのではなく、社会化を行わなかったからだ」と主張する方がいる。
はて?
社会化するための状況を作り出すのは誰でしょう。そうです、飼い主です。飼い主が行う行為が犬を社会化するための正しい行為とはほど遠いものであればそれを甘やかすと言うのではなかろうか?
私もよく飼い主に「甘やかすと犬はダメになる」と言う。また「犬に尽くし過ぎるのも犬に悪影響なのでほどほどに」とも言う。“犬に尽くそうとする愛情”が悪いとは言わない。犬好きなら当然のことと思う。しかし犬を育てる上での行為そのものが社会化するための行為とはほど遠いものであればいくら“愛情愛情”と口にしても犬のためになっていなければ耳障りなだけ。
積み重ねられてきた犬にとっての当たり前の利益がその状況を作り出してきた張本人である飼い主や第三者に阻まれれば拒絶行為、いわゆる問題行動という形で現れるのである。それと同時に繰り返された媚びへつらうような態度が犬同士の間で行われる下位の者が上位の者に対して取る行為と映り、「この人は自分より下位の者」とみなされ反旗を翻されるのである。
「犬は人の上に立とうなんて思わない」という断言
受諾は服従を意味し、拒絶は不服従を意味する。拒絶の意味はただ単にその行為に対して免疫がないだけではなく、受け入れることが相手を上位と認めたことを意味することを犬が知っているからである。犬が上に立とうという思考がないならばなぜ拒絶が起こるのであろう。
経験したことのないことに対して拒絶反応が起きるのは至極当然のこと。ところが今までさせてきたことをある時期を境にさせなくなるということが犬が「人の上に立とうとする動物だ」といわれる最大の原因である。
問題行動の症状が現れない犬は社会化を行う過程で上下関係が確立したために発症しなかっただけのこと。社会化をしたにもかかわらず問題行動を発症している事例が数多くある以上、「犬は人の上に立とうという考えを持っていない」とは言い切れない。
社会化されているのに人を咬むという矛盾
社会化されていない犬が圧倒的に人を咬むことが多いようだが社会化されている犬でも人の手を咬むことがあるという。そして原因は「飼い主の手を咬むことはいけない ことだ」と教えなかったからだと続ける。物凄い矛盾である。社会化する過程の中に「飼い主の手を咬むことはいけないことだ」と学ばせることも含まれているはずである。 手段はどうあれとにかく学ばせることである。それなのに咬むのでは社会化したことにはならない。
社会化されていない犬は例外なく人を咬むと断言している以上、 裏を返せば社会化されている犬は咬まないと言うことである。生き物に絶対はありえないのだが社会化されたはずなのに咬むのでは“権勢本能” が全くないとは言い切れなくなってくる。
最後の切り札
「権勢本能がないとは言い切れない」と指摘された時に最後の切り札として“脳波に異常がある”とか“遺伝的疾患がある”というしつけや訓練ではどうしようもなさそうな分野のことを言い出す方もいる。 咬む犬の原因として遺伝的疾患があるのは古くから言われている。調べたことはないがそう感じる犬は確かにいる。それでも訓練士は体を張って頑張っている。
正しい繁殖こそが唯一の解決策であるとも言う。それは“脳波に異常がある犬”や“遺伝的疾患がある犬”を見放す発言である。これから産まれてくる犬たちにとっては解決策となりうるが今現在目の前にいる“脳波に異常がある犬”や“遺伝的疾患がある犬”に対しては何の解決策にもならない。“脳波に異常”があっても“遺伝的 に疾患”があっても犬は利益と不利益から学習することもある。“拒絶せずに受け入れる”という選択肢を選ぶこともあるのである。
体罰や強制訓練はそういう犬たちを救える唯一の手段になりうることを動物行動学者や体罰反対論者はそろそろ学ぶべきである。
絶滅危惧種:中村信哉は絶滅の危機に瀕しながらも今日も咬みつくわんこを見守る