~告発~

エサを使ったトレーニングが主流のようである。正確に言うとそれしか知らないトレーナーが増えていると言った方がいいかもしれない・・・。

このエサを使ったトレーニングには非常にメリットがある。しかしデメリットもある。

今日はこのメリット、デメリットについての話ではなく“エサを使ったトレーニングしか、しようとしない”ドッグトレーナーについての話である。

「えっ!?ドッグトレーナーっていろんな訓練方法を知っているんじゃないの!?」

その人の理念や信条で知っていてもやらない人はたくさんいる。残念なことに・・・。

「エサを使えばチョチョイのチョイさ」 そう思っているならあまりにも犬を舐めすぎていることを深く反省していただきたい。

考えてもみてほしい。

エサを使ったトレーニングは犬がエサをもらうことに“最上の喜び”を感じ、自分のやりたいことを捨ててでもエサをもらうことの方が“優先”と考える犬にしか通用しないのである。つまり条件付きのトレーニングなのである。

例えるなら・・・

「金さえくれれば悪魔にでも魂を売る」と言ったところだろうか・・・。 そういう犬にしか効果は表れないのである。

ここでハッキリ申し上げておこう。

エサを見せても見向きもしない犬がいることを・・・。
エサをもらうことよりも自分の我を通すことをポリシーとする犬がいることを・・・。
エサをもらうことよりも人に触られることを嫌う犬がいることを・・・。

エサをもらうことよりも犬にちょっかいを出すことの方がおもしろい犬がいることを・・・。
もらえるものはもらうが人間の指示に従うことはゴメンだという犬がいることを・・・。 人が大っ嫌いな犬がいることを・・・。 犬に媚びる人間など認めない犬がいることを・・・。
エサは本能を制御するアイテムにならないということを・・・。

エサを見せればホイホイなんでも言うことを聞いてくれる、警戒心を解いてくれる、馴れてくれる、心を開いてくれる、好きになってくれる、呼んだら来てくれる、咬むのをやめてくれる・・・・・。そういう犬はそのやり方でしつければよい。

「罰を利用しなくたってしつけや訓練はできる」

そう断言するトレーナーは限られた犬しか訓練できない。残念なことに・・・・。

よそはどうか知らないが当訓練所の職務規程からすると上記の考え方は完全な職務放棄にあたり、重い重いペナルティーが科せられる。

当然である。この世には罰も併用しなければ訓練できない犬が存在するのである。罰を利用した訓練を完全否定するということは“そういう犬はやらない”ということである。職務放棄以外の何ものでもない・・・。

逆に体罰を使う必要もない犬に体罰を使うのも職務規程からすると不当行為に該当し、これまた重い重いペナルティーが科せられる。必要以上の罰は“過ぎたるは及ばざるが如し”の言葉通り、 何の効果もなくそれどころか虐待にあたる。また、適切な罰を与えなければならない状況で“意図的”に罰を与えないという行為は悪い事を見て見ぬふりをしたことになり、一つ不服従の経験をさせたことになってしまう。子供が公共の場でとんでもない悪さをしたのに叱りもしない親と同じである。

私は常々見習いに“叱る時は阿修羅の如く、褒める時は菩薩様のように慈愛に満ちた心で褒めろ”と言っている。と同時に自分自身にも言い聞かせている。自分自身を律するためである・・。

罰を利用した訓練は即効性と抜群の効果もあるがリスクも高い。つまり両刃の刃なのである。使用にあたっては犬の性格および学習能力の徹底的な分析をすると同時に弊害を正確に計算できなくてはならない。そのデータを元に罰の力加減と頻度、それと適切なフォローの仕方 を決めるのである。決して安易に使ってはならないものなのである。

それゆえに身に付けるには相当な覚悟がいるし、身に付けたら身に付けたで相当な責任を背負うことになる。それを考えるとエサに頼るトレーナーが増えてくるのは分かる気がする。動物行動学だとか褒めてしつける方法つまりエサを中心とした訓練方法だけでしつけができる 犬を相手にしている方が咬まれる危険性もないし、何の責任も背負う必要がない。

上手く行かなければ「飼い主が悪い」で責任逃れをすればいいのだから何とかトレーナーは楽で良い・・・・。

だが先ほども申し上げたように「それが通用しない犬はどうするの?」という話になった時に「できません」では職務放棄になるのである。

きたるべき日のために動物行動学、褒める訓練は当たり前として、適切な罰を利用した訓練などの幅広い知識と技を身に付けておかなくてはならないのである。それでも救えない犬に巡り会う。そうなったらもう自分の努力不足を恥じるよりほかはないのだが・・・。

そうそう一つ言い忘れたことがある。体罰を使用する訓練士にも二通り存在し、何のフォローもなく罰のみにて安易に訓練しようとする訓練士と罰の弊害を可能な限り残らないようにするフォローに長けた訓練士が存在することをつけ加えておく。

「そういう訓練は好きじゃない」とか、「犬がかわいそう」などの個人的な思想は修行を成し遂げた者のみが口にするべきである。個人的な思想を口にして、やるべきことから目をそらしていたら当訓練所では重~い重~いペナルティーが科せられる。

絶滅危惧種:中村信哉は絶滅の危機に瀕しながら今日も暴れん坊のわんこ達を見守る。

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