「訓練所に預けても訓練士には咬まなくなるが飼い主には咬みつく」という俗説。
これ“ほぼ嘘”です・・・・。もう一度言います。“ほぼ嘘”です。
ではなぜそう言われるのか?
“矯正訓練が完了していない”のに飼い主の下へ返される。
仮に矯正訓練が完了したとしても“正しい飼い方が指導されていない”
理由はこの2つ
そして訓練のプロであるはずの訓練士が咬癖犬の訓練を拒否する時代・・・・訓練士に対する信頼が揺らいでいく。
こうして「訓練所に預けても訓練士には咬まなくなるが飼い主には咬みつく」という俗説が生まれたのである。
しかし別の事実もあります。当訓練所で訓練した咬癖犬(本気咬み)の86%(H25年3月1日現在)が更正して現在飼い主宅で再び咬むことなく平穏に暮らしているという事実です。 (再犯率はわずか1%)
咬癖犬(本気咬み)の訓練を拒否する訓練所が大多数を占めているという事実を考えれば86%と言う数字がいかに驚異的な数字であるかと言うことがお分かりになると思います。
この86%という数字の中には世にはびこる“誉めてしつける”何とか式訓練や体罰厳禁しつけ論でプロと言われる訓練士が訓練したり、ネットで得た知識で飼い主様ご自身でしつけ ようとしたもののどうにもならなかったわんこたちが含まれています。つまり他の訓練士がどうにもできなかったわんこや体罰厳禁論者たちの理論がまったく通じなかったわんこたち が大多数を占めるのです。
HPの効果で県外からたくさんの咬癖犬(本気咬み)がきてくれたことで咬癖犬(本気咬み)を訓練できる訓練士がだんだん少なくなってきていることと体罰厳禁論は所詮野生の血を色濃く残した犬には通じないことが判明したのです。
さて「訓練士に咬まなくなっても飼い主は咬みつく」という俗説が“ほぼ嘘”だと言い切る根拠として・・・
まず第1に
咬まなくなった対象が全く赤の他人である訓練士だと言うこと。極論を言うと知らない人間にされた行為に咬むのは防衛本能によるもので極々自然な行為です。
その知らない訓練士に咬まなくなるという時点で考えられるのはその訓練士に懐いて“咬む必要がない”と犬が判断した場合、この状態ならまだ“必要があれば咬む”と 言うことです。もう一つは“咬む”という行為そのものに犬がなんの有益性も感じなくなったという場合。有益性とは咬むことによって犬が得るメリットのことである。 犬が“咬む”ことよりも“受け入れること”を有益と感じれば咬む可能性は限りなく少なくなります。
咬む原因はというと“自分が嫌なことから逃れられる”“自分の嫌いな人間を排除できる”“嫌いな下位の者を痛めつける”などの“拒絶行為”なのである。
他人からされることに拒絶反応を示さなければ飼い主に対して拒絶しなくなるのは至極当然のこと。
あとは今まで咬んで拒絶していた状況を受け入れることが犬にとって当たり前になるまで反復練習を繰り返すだけです。たいがいこの反復練習でストレスと感じていたもの、拒絶したくなることがストレスと感じなくなり拒絶行為による咬癖( 本気咬み)はなくなります。 その結果が咬癖犬(本気咬み)の更正率86%という数字なのである。
そして第2に
ここが重要です。これをしているか、していないかで結果が大きく変わります。 訓練士に咬まなくなった後にきちんと飼い主に“正しい犬の飼い方”を指導して、それが“実行されるように”訓練士が口を酸っぱくして指導しているかどうかである。“正 しい飼い方”とは一般的に言われる犬に主導権を握らせない毅然とした態度を基本に、散歩の時に引っ張らせない、体をどこでも触らせる、マズルをコントロールする、エサを 人間より先にやらないなどである。それについてはしつけ本やDVD、犬サイトに氾濫しているのでご存じの方は多いのではないだろうか。
にもかかわらず“訓練士に咬まなくなっても飼い主には咬みつく”という現象が起きるということは“正しい飼い方が実行されてない”と考えるか“矯正訓練が完了していない” と考えるべきである。
“矯正訓練が完了していない”についてはのちほど述べるとして“正しい飼い方が実行されていない”について言うとたいがいされていません。依然よその訓練所に訓練を依頼された方に話を聞くとただ単に「服従課目をおさらいしてくれ」という指導にとどまり、犬が“咬みついて拒絶”する行為に発展しないための指導がされ ていないのです。それがされていないためにまた咬みつくのです。
“矯正訓練が完了”して、“正しい飼い方が実行”されていればほとんど飼い主に咬みつくことはありません。では“正しい飼い方”とは何か?“服従課目のおさらい”はもちろんのこと、人間と犬がきちんとした関係を維持するための大原則“即罰即賞”が実行されることです。“誉める”ことは全ての飼い主様ができるのですが“叱る”ことができ ない。この“叱り方”を懇切丁寧に教えることが最も重要であり、ここができるかできないかが鍵を握ってると言っても過言ではないのです。この“叱り方”こそが“正しい飼 い方”の根源であり、ここが指導されていないがために“咬みつく”という行為に発展していくのである。
そこで繋がるのが“矯正訓練が完了していない”というもう一つの原因・・・・“訓練士に咬まなくなった”という行為が“誰に対しても咬むという行為を取ってはならない” という発想の下に取られていないとしたら?
よく耳にするのが担当訓練士には咬まないが他の訓練士には咬むという事実。この状態で飼い主の下に戻されるケースがほとんどで ある。
“複数の人間に咬まなくなって”はじめて矯正訓練が完了したといえるのです。
こうして「訓練所に預けても訓練士には咬まなくなるが飼い主には咬みつく」という現象が起こるのです。(正確に言うと訓練士にも咬む状態なのだから飼い主に咬むのは当然と言えば当然なのだが・・・
当訓練所では
- “矯正訓練の完了”の定義を担当訓練士以外の所員にも咬まなくなることとしています。
- 入所期間中に飼い主に徹底して“正しい飼い方の”指導を行っています。
- 卒業後に不測の事態が起きた時にはすぐに飼い主宅にお伺いしてレッスンを行います。
このように徹底した管理とアフターフォローにて咬癖犬(本気咬み)更正率87%を達成しています。
総論
本気咬みの咬癖犬はプロと言われる訓練士でも難しいものです。決して机上の空論で矯正できるものではありません。あなたのわんこを救えるのは確かな見識を持ったあなた自身です。本当に必要なことを見極めてください。
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