“刃圏”というものがある。
刃(やいば)が相手もしくは自分に届く範囲のことである。もちろん武器が刀であったり六尺棒であったり、鎖鎌であったり、相手の体格・リーチ・身体能力・経験によって同じ武器でもその“刃圏”は変わってくる。わんこも同じ。
優れた剣豪同士は相手の“刃圏”が手に取るよ
うにわかったという。
その刃圏がわかるからこそ迂闊には動くことができず、睨み合いが1時間にもおよぶこともあっ
たと記された文献もある。お互いに喉は干上がり、ただ立って刀を構えているだけなのに恐ろし
く体力・気力を消耗したと言われる。
それを制した者が勝者となったようである。
なぜこの話をしたかというと12月にきたわんこが一番最初に見てもらったトレーナーがわんこの“刃圏”に無造作に入り込んでガッツリ咬まれているからである。
「どんな子でも名前を呼んでおやつをあげれば咬まなくなる」が信念のようで、おやつを持った手を近づけた瞬間・・・・「きゃーーーっ!ブシュー!」となった。
どんだけ犬を舐めているのだろう。飼い主が“咬む”と忠告しているにもかかわらず咬まれたのでは話にならない。
相手の“刃圏”に入る時はかならずすべてをかわす、もしくは防ぐことを前提で入らなくてはならない。咬む犬に咬ませる経験を1回でも積ませるとまた一つ咬むことによるメリットを学習させてしまい、どんどん手がつけれられなくなる。たった一度の経験で揺るぎない自信を持つわんこだっている。
50回咬んで自信を持つ犬、体格や筋力がつくまで一旦潜伏する犬、確固たる自信を持つ瞬間はまちまち・・・・。咬むことによる利益を学習したわんこを舐めたらあかん・・・。
「できないなら余計なことはしないでくれ・・」というのが正直な気持ち。
そこが“咬む犬を見る目”があるかないかの差である。これは別に武術の経験者ではなくても誰でも意識すればできること。
犬を見ればわかることであり、その情報を分析し最も適した方法で取り扱うことがわんこに「この人ただ者ではない!」と思わせる一つの方法である。これは“咬むわんこ”に限ったことではない。
毅然とした態度しかり、反抗的な態度をとった時の対処しかり、恐怖心を抱いている時の対処、興奮している時の対処・・・対処法を知ることが犬をしつけをするうえで最も重要なことの一つである。愛情はあって当たり前・・・。
「どんな子でも名前を呼んでおやつをあげれば咬まなくなる」=「金さえ見せればどんな人間でも従う」
はて?そう聞こえるのはミーだけだろうか?犬を舐めすぎてはいないだろうか?
絶滅危惧種:中村信哉はわんこを舐めることなく今日も本気咬みのわんこたちを見守る