こんにちは。“絶滅危惧種”の中村です。
先日、東京から2件の訓練の依頼がありました。
はるばる栃木まで訓練に出してくれるのはとても
ありがたいことです。スタッフ共々身の引き締ま
る思いです。
話をお伺いした中で「まただ・・・・」と思うことが
ある。
適当な仕事をする訓練士のことである。訓練の
方法のことではない。期間の問題である。
「4回ほど出張訓練をおねがいしたんですけど・・・・」
「1ヶ月半程預託訓練に出したんですけど・・・・・」
飼い主は一つも悪くない。悪いのはそれでは効果が期待できないのは分かっているのに引き受
ける訓練士のことである。
たった4回で何ができる。たった1ヶ月半で何を覚える。仮に覚えたとしても習慣化するまでにどれだ
けの期間がかかるかはプロを名乗る訓練士ならわかっているはずである。
本当に“出来るようになる”とは“習慣化すること”である。
小学校で九九を習って覚えるまでにどれだけの反復練習を繰り返すと思っているのだろう。一の段から九の段まで言えるようになってもちょっとさぼれば忘れてしまうのは誰しも経験のあることだろう。犬だって同じである。できるようになっても反復練習を怠ればすぐにできなくなるし、ましてや新しいことを教えていけば頭が混乱してくる。それを整理できるようになるまでに時間がかかる。整理がつくようになっても誘惑が入ったり、興奮状態にあったり、気分が乗らなかったりしたら“オスワリ”すらできないことだってある。それを乗り越えなければ“習慣化”はありえない。
「お試しでやってみましょう」などと言うのだろうか?一体何を試すんだろう?試すまでもなくそんな期間ではロクな事も教えられるはずもなかろうに・・・
きちんと犬が物事を覚えるのに必要な期間や必要な経験があることを訓練士として飼い主に説明する義務があるように思われる。
私は絶対に「1~2ヶ月でお願いします」という依頼は受けない。最低4ヶ月間は譲らない。場合によっては6ヶ月またはそれ以上期間を頂く場合もある。なぜなら訓練をされる犬には飼い主の事情など関係ないからである。各犬によって学習能力が違うし、抱えている問題行動も違う。入所初日から訓練できるものでもない。体調を崩すこともあるし、伸び悩む時期もある。突然反抗期が訪れることもあるし、犬の頭がこんがらがることもある。一生懸命適応しようとしている犬に飼い主の都合で詰め込むような事はしたくない。やろうと思えばできるが犬に負荷がかかるのは火を見るよりも明らか。一生懸命やっている犬の気持ちを考えずに人の事情で無理に詰め込むような訓練士でいいのですか?
やってはならないことをやった時や意図的に悪さをした時は烈火の如く叱りますよ。「もうその辺にして!」と止めたくなるほど・・・。でもそれとこれは全く別の話。
10年物の香り芳醇なワインを3日で作ってくれと言われて「ハイやってみます」というワイン職人がどこにいる。時間がかかるものはかかるのである。
本気で咬む犬で最初の所見では卒業のメドが立たないほど重症だと思われた犬でもいざ訓練を開始したら思ったほどでもない場合には何ヶ月も早く卒業することだってある。それでも最低5ヶ月間はかかる。犬が物事を覚えるのにかかる時間を飼い主も理解しなくてはならない。
適当な仕事もしない。卑怯なこともしない。ただその犬の行く末を念頭に置き、きちんと訓練が入ることだけを考えて一心不乱に訓練する。時にはわからずやの飼い主と電話越しにケンカすることだってある。絶滅危惧種と言われる所以かも知れない。
おっと、こんなことを書いてるとかみさんに怒られる・・・・。
「商売する気あるのっ!?(怒)」
もちろんである。
絶滅危惧種:中村信哉は危機に瀕しながらも今日も咬みつくわんこを見守る