この手記は10件の専門家にたらい回しにされ、北栃木に辿り着いた柴犬コロさんのオーナー様が卒業に際して記したものである。原文をそのまま転記しています。ねつ造無しのオーナー様の声をご覧ください。
中村
「夢のような日々」
この一言に尽きます!
声を大にして申し上げたいのは、私たちは、咬まれていません!
咬む素振りすら見せません!
コロが生後半年で咬むようになってから、毎月のように誰かが咬まれていたので、50日間以上も家族が無傷である、しかも、めちゃめちゃ扱いやすい、というのは、本当に奇跡のようなことです。
それでは、ざっとこの50日間を振り返ってみたいと思います。
帰ってきてから2週間くらいでターニングポイント来たる!
コロはそんなことはありませんでしたが、飼い主側はこの辺りまで、まだ緊張の面持ちでコロと接していました。
このうっすらとした恐怖感は「また咬まれたら、どうしよう」という恐怖感よりも、「間違えた接し方をして、コロが元に戻ってしまったらどうしよう」というものでした。
足を拭く時、爪を切る時、雨などで体を拭く時、「オイデ」でちゃんと来るように練習する時などなど、日常生活で必要となってくる部分をきっちりきっちりすることが、先生の訓練を維持していける一番の良い方法だと思ったので、真面目に頑張りました。
ちょうどそんなある日のこと。
コロに爪切りをする訓練をしている時、今までそんなことはなかったのに、コロが突然抵抗しました。
爪切りの体勢に不満だったのか「唸り顔」をしたコロに一瞬ひるんだものの、すぐに思い直し、厳しく叱りました。
私たちは、そんな風にしっかりと叱るのは初めてのことでしたし、同時にコロも私たち飼い主にしっかりと叱られたのは初めてです。
コロはブルブルと震えて、そして、大人しくもう一度爪切りの体勢に従いました。
後から振り返れば、この日が大きなターニングポイントになりました。
「抵抗や拒絶をしたら、しっかりと叱って下さい。そして、その拒絶した行動をもう一度行い、しっかりと受け入れさせて下さい。」
中村先生からの沢山のレクチャー・アドバイスの中で、一番大切な部分は上記のものでした。
沢山頂いたアドバイスは、まだ「実践」と結びついていない部分もあったのですが、この日を境に私たちははっきりと「自分たちがどのようにコロに接していったらよいのか」ということを知ることができました。
上記のアドバイスこそ一番大切で、コロと暮らしていく限り、ずっと持ち続けなければいけない姿勢だったのです。
(ちなみに「褒める」というのは、これまではずっと「褒める躾」をやってきたので、褒めるべき時には褒めています。)
その後、すぐに中村先生にお電話にて報告、再度アドバイスを頂きました。
ブルブルと震えながら受話器を握りしめ、先生のおっしゃることを真剣に聞きました。
「どの飼い主さんも一度は通る道ですよ。しっかりと叱って、そして、もう一度同じことをやって受け入れさせる。そこをしっかりとやっていってください。大丈夫です、できますよ。」
「もしかしたら、このことがきっかけでコロが戻ってしまったら、どうしよう」と狼狽えていたのですが、先生の解説を聞くうちに心が静まりました。
コロと1年間寝食を共にした中村先生です。
気が動転していて、要領を得ない私の説明であっても、コロがどのような態度を取り、叱られてどのような心境に至ったのか、手に取るようにわかっておられました。
それに先生に「大丈夫」と言われると、本当に大丈夫な気がするのです。
大変遅まきながら、「これが先生が何度もおっしゃっていたことだったのか!」と、ようやく点と点がつながり、ほんの少しですが自信がついた瞬間でした。
そして私たちは愛犬一匹(しかも訓練済み)でこれだけ大騒ぎですが、中村先生は猛獣のようになってしまった沢山のワンコさん達に、毎日立ち向かっておられるのです。
「唸り顔」どころのレベルではありません。
それを思ったら、絶対に恐怖心を乗りこえなくては!
猛烈に励まされた瞬間でもありました。
コロちゃんカップは、晴天時、毎日開催!
すぐに飽きて5分で試合終了なので、どなたでもお気軽にご参加頂けます(笑)
「叱る」とは「つっこみ」に似ている?
ターニングポイントを経て、私たちは「叱る」のが少しづつですが、うまくなってきました。
「的確に叱れるようになりたい」
そう思って試行錯誤していくうちに、
「いわゆる『つっこみ』のタイミングで、さくっと叱ればいいのかも!」とひらめきました。
「って、アンタ、なんでやねん!」というタイミングで、迫力満点の雷を落とせば、一発で「僕は叱られた!」と叱られたことを認識するので、いつまでもぐずぐずと叱らずに済むようになりました。
それを目にしただけで私たちを震え上がらせた「唸り顔」に、敢然と立ち向かう時がやってきました。
私たちはずっとずっと「唸り顔」が怖かったのです。
コロはありとあらゆる場所、シュチュエーションで私たちを咬みました。
「咬み」に至るまでの前兆である「唸り顔」は、それだけで震え上がるほど、私たちにとっては恐怖の象徴でした。
丸腰の私たちは、なすすべもなく咬まれてばかりでしたから。
かつてのトレーナーさんがおっしゃいました。
「『咬み』に至る場所・行動・シュチュエーションを把握して、その状況を作り出さないようにして、『咬むという回路』を錆びさせましょう。」
「その回路が錆びたら、どんなに良いか」
咬まれた状況を分析して、そうならないように努めました。
結果はもちろん惨敗に次ぐ惨敗。
今ならわかるのですが「咬むか咬まないか」を決めるのはコロである以上、コロを監視して神経をすり減らしても、そんなことをするだけ無駄でした。
犬が何かを「咬む」というのは本能に基づくものなのですから、生きている以上、錆びることなんてないのです。
たった一つ「咬んだら、損だな」と犬が感じるとき以外は。
これからはコロの「唸り顔」に対して、毅然と叱ることで対抗できます。
「そんな態度は許さない。」
この姿勢を貫けば、コロとずっと楽しく暮らしていけるのです。
そして、ターニングポイントを境にコロも変わりました。
コロは「私たちに叱られると、自分が損をする」ということがわかってきたようで、「ダメ」というだけで、すぐにいたずらを止めたりするようになりました。
「唸り顔」もその後数回あったくらいで、もう見られなくなりました。
でも油断しません。
「飼い主たちに反抗したら、僕は損するな。」と、コロが損得勘定した結果の態度なのですから、私たちが昔のような甘い飼い主に戻れば、またそのバランスは揺らぐことでしょう。
これからもコロが反抗的な態度を取ったら、ツッコミ命で、叱りたいと思います。
長くなりそうなので、一度ここで区切って「夢のような毎日(2)」に続けたいと思います。
ここまでお読み下さって、ありがとうございました。